巻頭言
宇宙生物学研究への希望
橋本 義雄
1
1名古屋大学
pp.1067
発行日 1959年12月15日
Published Date 1959/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200836
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1959年9月14日午前6時2分24秒地球から38万キロもはなれた月にとうとうロケツトが打ち込まれた。これによつて月世界は人類の科学の勝利の前に一変した。この月ロケツト成功の朗報に人間の宇宙旅行への夢実現も決して遠くないであろうということが考えられる。地球上に於ける人類に対する医学はこの数年のうちに一大躍進したことは事実である。然し今人類に対する太陽,宇宙的影響の研究ということになると極めて乏しいものである。地球と月との関係が現実的に結ばれた現在人類の将来に対して極めて重要なことは地球,大気的並に宇宙生物学的の問題が医学の各領域に於ても学術的に真面目に研究されることだと思う。地球上の色々な現象を太陽或は宇宙原因に帰させようとする傾向は今日までも色々と論議されてきた。このような関係で特に医学にとつて意義深いと思われるものに前東邦大学教授高田蒔博士の血清絮数反応に関する研究がある。これは観測出来る太陽現象と任意の被検者の人血清の測定出来る性状との間に直接的関係のあることを明示したものである。そしてその観察された太陽効果というものは,循環中の血液のみに現われ,一旦体外に採取された血清には少しも変化が現われてこない。即ち絮数は顕著な日変化を示すものでこのことは天文学的に計測された地方日出時間の6〜8分前に絮数は突如として約20%上昇する。そして日中は緩慢に増加して日没の直後に再び突如として下降する。
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