扉
宇宙と小宇宙
大野 喜久郎
1
1東京医科歯科大学脳神経外科
pp.586-587
発行日 2001年7月10日
Published Date 2001/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436902062
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果てしない宇宙の銀河系の片隅で,人類は地球時間として21世紀を迎えた.何かしら期待に満ちた気分になってもおかしくはない.地球の文明は20世紀において驚異的な発展を遂げ,かつてない未知の時代を迎えている.テクノロジーの発達は目覚ましく,ヒトゲノムの解読はほぼ終了した.哲学を越えて科学が全てを凌駕する時代の幕開けかも知れない.これは,人類にとって輝かしい未来の始まりだろうか.また,科学の進歩に伴って,ミクロコスモスである人間の精神は進化するだろうか.そして,民族,宗教,イデオロギーによる対立,戦争,環境破壊,資源の浪費など人類固有の問題は21世紀の間に解決されるだろうか.
宇宙ではミクロである地球の,そのまたミクロの日本の社会状況はなお厳しく,日本丸は海図のない航海をしていて,目的地は見えず,さらには船長すらいなくなっているような感じすらある.しかし,経済的に不況とはいっても,バブル期が異常であったのだと考えれば,現在はむしろ沈静化し元に復した状態ともいえる.治療すべきは異常な時期の後遺症であろう.日本人は,戦後の悲惨な状況からようやく取り戻した自信を再びなくしつつあるようであり,責任感の喪失は感染症のように蔓延しつつある.それを象徴するように,このところ,危機管理に関する報道が目立つ.
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