Japanese
English
特集 冠硬化
綜説
冠動脈硬化症に関する実験的研究
Experimental Studies on Coronary Atherosclerosis.
松本 芳次郎
1
,
国府 達郎
1
,
小出 鈴三
1
,
細川 宣彥
1
,
小林 六郎
1
,
酒井 基典
1
,
橋本 武彥
1
Yoshijiro Matsumoto
1
,
Tatsuo Kokubu
1
,
Reizo Koide
1
,
Nobuhiko Hosokawa
1
,
Rokuro Kobayashi
1
,
Motonori Sakai
1
,
Takehiko Hashimoto
1
1大阪大学堂野前内科
1Third medical clinic of Osaka University
pp.4-17
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200711
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序
実験的コレステリン型硬化症は,人の粥状硬化症の模型と見做され,広く研究に利用せられているが,他方,人の粥状硬化との相違点も多く指摘せられて居り,之は本症の病因論に於ける,脂肪説否定の根拠の一つともなつている。その相違点の中で重要なものとして,1)実験的硬化では病巣が殆んど泡沫細胞の集積から成り,著しく多量の脂質を含み,又高脂血症と共に,全身諸臓器の脂肪化が併存し,動脈の病変は,恰も全身脂肪症の部分現象に過ぎないかの如くであるが,人の場合は,かかる全身的脂肪症は恒存せず,病巣には,アテロームの他に,線維化,硝子様化,或いは石灰化の部分が多いこと 2)実験的硬化では,病巣部の壊死,出血,潰瘍形成,血栓形成等がなく,従つて続発性臓器障碍たる,心筋梗塞や脳軟化を起すことが困難であること等の事実を挙げることが出来る。
これを要するに粥状硬化症の重大な臨床的意義は,血管腔の狭窄或いは閉塞によつて,臓器障碍を起すことにあり,なかでも冠動脈と脳動脈に於ける病変が特に重大な意義をもつている。しかるに従来の実験の多くは大動脈を目標として行われ,冠硬化を目標として,その硬化性閉塞によつて,臨床上見られる様な心筋梗塞或いは心筋変性症を起さしめ得た報告は極めて少ない。
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