Japanese
English
特集 急性心筋梗塞とその発症メカニズム
脂質と冠動脈硬化
Lipid Metabolism and Coronary Artery Disease
酒井 尚彦
1
,
山下 静也
1
,
松澤 佑次
1
Naohiko Sakai
1
,
Shizuya Yamashita
1
,
Yuji Matsuzawa
1
1大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科(第二内科)
1Department of Internal Medicine and Molecular Science, Graduate School of Medicine, Osaka University
pp.769-774
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901941
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はじめに
Framingham studyをはじめとする多数の疫学的検討により高脂血症,とりわけ高コレステロール血症が冠動脈硬化症をはじめとする動脈硬化性疾患の大きな危険因子の一つであることが明らかになって久しい.血清脂質にはコレステロール(TC),中性脂肪(TG),リン脂質(PL)の3種類が存在するが,臨床的にその高値が問題となるのは高コレステロール血症と高中性脂肪血症である.血清中性脂肪値については虚血性心疾患との関連は未だ明らかでない.しかし,現在のところ糖尿病,家族性高コレステロール血症などある種の集団においては虚血性心疾患の危険因子であることは間違いない.図1,2に厚生省原発性高脂血症調査研究班(垂井班)1)において行われた疫学調査結果を示す.わが国においても血清総コレステロール値と虚血性心疾患の合併率は正相関を示すが,血清中性脂肪値とは相関を示さない(図1).しかし,遺伝的にLDL受容体が欠損した家族性高コレステロール血症(FH)患者においては血清中性脂肪値と正相関を示すことが明らかとなった(図2).また,近年高中性脂肪血症においてTG-richリボ蛋白の中間代謝産物であるレムナントリポ蛋白と動脈硬化症との関連も注目を浴びている.高脂血症ではないが脂質代謝異常の一つである低HDL血症も危険因子の一つであることはいうまでもない.
本稿においては高脂血症,リポ蛋白代謝異常がどのように動脈硬化の発症・進展と関係し,ひいては心血管合併症を発症するかについて概説する.
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