今月の主題 冠硬化症の新しい知見
冠硬化症の診断
冠動脈造影から見た冠硬化症
細田 瑳一
1
,
宮田 捷信
1
1東女医大・心研
pp.178-183
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204601
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冠動脈硬化症は,元来病理学的所見であり,臨床的に確認できるものではない.冠動脈造影法は,現在のところ,臨床的に冠動脈の状態をみる唯一の方法である.冠動脈の血流量は正常の状態ではかなり余裕があり,間接的な冠動脈血流量の測定や心電図やカテーテル検査などによる血行動態の検討では,冠動脈の局所的な状態を知ることはできない.従って臨床的には,冠動脈造影法が冠動脈硬化を判定する最も直接的な指標である.
冠動脈造影から冠硬化を判断する所見としては,1)狭窄像,とくに数個所以上に狭窄像を認め,狭窄部の前後の壁面が不整なもの,2)細かい分枝の増生,3)側副血行路,が主要なものであり,4)その他,蛇行,心筋濃染,閉塞なども冠硬化の所見としてとりあげられる場合がある.周辺部が平滑な狭窄は動脈痙攣である場合が多く,他に所見のない一個所だけの閉塞は塞栓症に見られる.年齢や動脈硬化を促進する合併症,心電図所見などは同時に考慮さるべきである.冠動脈の狭窄所見は左前下行枝の起始部から1-2cm付近に最も多く,右冠動脈の鋭縁枝付近と後下行枝分岐の直前がこれに次ぎ,左回旋枝でも起始部から1-2cmの部分に多い.一つの血管に狭窄のある場合他の血管にも少しは変化のあることが多い.冠硬化症と言う場合には,虚血性心疾患と区別は困難であり,一応ここでは冠動脈硬化性心疾患の冠動脈造影像をいくつかとりあげてみる.
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