巻頭言
脳卒中の発生機序について
佐々 貫之
1
1関東逓信病院
pp.897
発行日 1957年12月15日
Published Date 1957/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200566
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過去10年間における予防及び治療医学の長足な進歩に伴つて我が国国民の寿命の著しい延長を見たが,その主要なる原因の1つは結核や伝染病の進歩によつてこれら疾患の死亡率の急激な低下にあることは言をまたない。その結果,現在では脳血管損傷に基く疾患の死亡率が全国統計上最高位となり,これに次いでガン・老衰・心臓病・結核の順に高い。この中結核は今後益々制圧されることが予想され,ガンについても外科療法・放射線療法の進歩と共に今後有力な抗ガン剤の出現の可能性が濃厚である。残された脳卒中・老衰・心臓病は相互間にも,またそれぞれが高血圧・動脈硬化・老化現象などとも密接な関係にあつて,その研究と対策とは重要な今後の研究課題である。
さて,我が国最高死亡率を示す脳血管損傷による疾患については,解決すべき色々の問題があるが,脳卒中の発生機序を解明することも重要であろう。脳卒中がどうして発生するかについては,今より20〜30年前頃までは学者の間に盛んな論争がくり返され,医学会を賑やかしたものである。この論争の焦点を大別すると,脳卒中が機能障碍によつて発生するという説と器質的変化を前提とする説とに分れている。
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