Japanese
English
特集 いたみ
頭痛の発生機序
Perception of Headache
喜多村 孝一
1
Kohichi Kitamura
1
1東京大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, Tokyo University
pp.46-56
発行日 1967年3月25日
Published Date 1967/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904389
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I.緒言
頭痛はごくありふれた症状である。われわれのもとを訪れる患者の大部分のものは頭痛を訴えるが,一応健康とされる一般大衆の間にも頭痛はひろくみられるようである。Ogden18)によると,4,600人の調査対象のうち実に65%の人々が頭痛を訴えたとのことである。本邦においてもおそらくこれに当らずとも遠からざる数字があげられることと思う。このようにあまりにもありふれた症状であるにもかかわらず,頭痛そのものを対象とした研究はその方法の困難さも手伝つて誠に不備といわざるをえない。頭痛の研究を困難にしている理由の一つは,他の疼痛と異なり精神的因子がきわめて大きく関与しているという点である。末梢での痛覚刺激がなくても精神的とくに感情的なある状態では頭痛が現われる。すなわち頭痛は純粋な主観的体験としても存在しうるのである。神経症や憂うつ症にみられる頭痛はこれてある。また,末梢の痛覚刺激を原因とする頭痛においても,動物実験による研究はきわめて困難である。かつて教室の寺尾らは頭部外傷後遺症の研究の一環として,サルにneurovascular frictionによる実験的脳外傷を作成し,これによつて生ずる頭痛その他の後遺症状の観察を試みた。その方法はいろいろのvital signの検索と,行動・生態の観察によつたのであるが,少なくとも頭痛に関してはその存在すらも確実には把握できなかつた。
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