Japanese
English
診療指針
脳溢血の温泉療法
Spa treatment of the sequelae of cerebral hemorrhage.
大島 良雄
1
,
横山 巖
1
Yoshio Oshima
1
1東京大学医学部物療内科
1Physical Therapy and Medicine, Medical School of Tokyo University
pp.481-487
発行日 1957年7月15日
Published Date 1957/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200513
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はしがき
日本の温泉療法の歴史は神代に始まる古さであるから,名の知れた湯治場では何百年以上もの治病経験が積み重ねられている訳である。一方西洋医学の渡来は比較的最近のことに属し,しかも今に至つても温泉医の制度が確立されず,従つて前世紀的な"しろうと"任せの温泉療法が実際上厚生省にも医師会にも一般国民にも当然の如くに認められている日本では,せつかくの温治効果もその実態の把握は甚だ困難な状態にある。
しかし,化学療法の進歩のお蔭で,今や死因の第一位にのし上つた脳卒中に対する日本の誇り得る資源,温泉の効果を再検討する目的で,昨昭和31年度より文部省科学研究費の援助の下に全国各種の温泉の泉質について総合的な温泉研究が開始せられるに至つた。脳卒中の原因となる疾患が脳溢血だけでなく,従つて動脈硬化症,高血圧症,糖尿病,腎炎のみか,心臓弁膜症,先天性血管異常,敗血症,白血病その他の血液病,腫瘍,膠原病等々が関与していることは周知の事実であるが,これ等の中で温泉療法の適応症となり得るのは,高血圧症,動脈硬化症,糖尿病の如き慢性非炎症性の疾患と脳卒中の結果として生じる脳性の片麻痺とである。
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