Japanese
English
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温泉と皮膚
DIE PHYSIOLOGISCHEN REAKTIONEN DER HAUT VON HYDROTHERAPIEN.
伊藤 嘉夫
1
Yasuo ITO
1
1九州大学温泉治療学研究所皮膚科
1Dept. of Dermatology, Institute of Balneotherapeutic Research, Kyushu University
pp.471-478
発行日 1962年6月1日
Published Date 1962/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203286
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I.まえがき
温泉療法Balneotherapieを含めて広く水治学Hydrotherapieの分野は皮膚を通して行われる。その作用物質が1種の刺激であれ,又薬剤であるにしろ,その作用機序は先ず皮膚を通すという点で一致している。(鉱泉療法は浴療法,飲泉療法,吸入法,灌注,圧注法等多種多様の応用形式があるが,此所では全身治療法Vollbadに就いてのみ説明する)。淡水浴とは全身作用を強く発現する点,薬浴は薬効を有する薬剤を溶解せしめ主として薬効を期待する点で鉱泉浴療法と異っている。鉱泉水は不安定な鉱質成分を含み,時間の経過に従つて効力を失う性質即ち老化現象を有するため,原則として湧泉地でのみ治療が行われる。従つて気象的,精神的の諸因子が又治療効果を左右する事があり,これら因子の影響も亦無視出来ない。鉱泉の含有成分は直接皮膚組織の変性或は皮膚機能を変動せしめ得る遊離の炭酸,硫化水素,コロイド硫黄,硫黄土類アルカリ,遊離鉱酸等を含む特種の鉱泉もあるが,多くの鉱泉はNa',Ca",Mg",Cl',HCO3',SO4"等を含む稀薄な塩類溶液で,極めて微量のFe",Cu",Al…,その他Ge,Mn,V,Zn,Mo等の稀有元素を含んでいるが,これら鉱質の総含有量は0.1%前後に過ぎない。従つてこれらの鉱質が高率に吸収されても生理作用を変動せしめ得ないであろうと思われ勝である。
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