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講座
血液pH測定法と欧米の硝子電極・Ⅰ
pH Determination of Blood and Glass Electrodes
吉村 寿人
1
Hisato YOSHIMURA
1
1京都府立医科大学
1Department of Physiology Kyoto Prefectural Medical College
pp.413-418
発行日 1956年5月15日
Published Date 1956/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200368
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血液のpH測定法と言えばすぐ硝子電極を思い出す程この両者の関係は切つても切れぬ間柄にある。それは第一に硝子電極が今日の様に広く用いられる様になつたのはLondon大学のKerridge(1925)1)の努力の賜であるが,彼女はHaber以来余り用いられてゐなかつた硝子電極に着目して,これを血液pH測定に用いて大成功を収め,ここに硝子電極の真価が世に認められたのである。そして今日に於ては,血液pH測定には硝子電極が不可欠のものとなり,硝子電極法以外の方法による血液pH測定は欧米に於ては殆んど省られなくなつている。然るに残念乍ら今日の日本殊に医学界においては,果して硝子電極による血液pH測定法がそれ程普及されてゐるであろうか。今だに誤差の多いキンヒドロン電極法,比色法,更にひどいのになると使いものにならぬアンチモン電極を用いてとんでもない値を出し,「比較的に正しい」などと澄ましている人はいないであろうか。先般アメリカへ参つた時にBethesdaの海軍研究所でDr. Sendroyに出合つた時,日本では未だ君の比色法で血液pHを測定している人がいると言つたら,喜ぶよりも眼を丸くして驚いていた。この様に硝子電極による血液pH測定法が我国に普及しなかつた理由は,私共の啓蒙の努力が足りなかつた点もあろうが,我国のメーカーにその熱意がなくして生物学に用い得るpH meterの製法を怠つている点が多分にある。
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