Japanese
English
綜説
肺塞栓症について
On the Pulmonary Embolism.
橋本 義雄
1
Yoshio HASHIMOTO
1
1名古屋大学医学部第一外科教室
11st Surgical Department Nagoya University, School of Medicine
pp.322-329
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200178
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緒 言
肺塞栓症は専ら手術後合併症として一般に注目されているが,実際に於ては手術を行わないものにも亦認められるものである。従つて之は外科的並に内科的の2つに分けられる。前者は手術後又は分娩後に併発するものであり,後者は心臓疾患或は悪性腫瘍の末期等に続発するものである。何れにしろ本症の多くは静脈血栓に由来して起るものであるが.幸い我国では静脈血栓症が欧米に比べて極めて少い為に,肺塞栓症其のものも亦稀なものとされている。然し一旦本症が発生するや其の死亡の原因となる率は極めて高いものである。
一方我国でも最近静脈血栓症が以前に比し増加の傾向を示しているのではないかと思われる点もあるのであつて,私もこの数年来此の方面への関心を持つて色々な症例を観察していると特に其の感に打たれるのである。従つて我国で之等の疾患が少いと云うことも或は一般の関心が少い為に報告にも乏しく又事実肺栓塞にて死亡した患者であつても時によると心臟麻痺,肺炎等の診断のもとに葬られて了つている場合もあるのではないかとも考えられる。試みに昭和2年より24年の22年間に於ける当教室の先代,斉藤外科の梶田1)の統計を見ると,手術後静脈血栓症は唯の7例に過ぎないが,私は最近僅か3年の間に既に外科手術のみで7例,他の症例を合算すると19例の症例を経験して。
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