Japanese
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診療指針
腦卒中
Apoplexia
佐々 廉平
1
Rempei SASSA
1
1東京杏雲堂醫院
1Kyoundo Hospital
pp.109-114
発行日 1953年5月15日
Published Date 1953/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200087
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Ⅰ.腦卒中の意義
腦卒中とは,腦の急激なる循環障碍の結果,急速なる意識喪失と全身随意運動の失墮とを呈する病症(寧ろ病像)に向つて與えられた名稱である。この急激なる循環障碍を起す原因が主に腦溢血であるために,免角腦卒中と腦溢血とが同一視せられ易い。腦卒中は,腦溢血の他に,腦血栓,腦塞栓,腦膜出血によりても起る。その他,假性尿毒症(高血壓性腦症),腦梅毒及び麻痺狂の經過中,腦腫瘍内出血,腦實質内又は腦表面の動脈瘤破綻等にて卒中酷似の病像を呈することがある。由つて,腦卒中乃至卒中様發作を見たならば,その何れによつて起つたかを見分けねばならぬ。
真正腦卒中は,腦溢血,腦血栓,腦塞栓によつて起るが卒中を起す各病症の頻度は大凡次の如くである。先ず腦塞栓(エンボリー)は最も少數であつて,東北大病理教室に於ける木村男也・松岡茂氏等による剖見の統計でも私の臨床的検査でも全卒中の約3%に過ぎぬ。のこりの97%が溢血と血栓(トロンボーゼ)とであるが,両者の比は,木村・松岡氏等によれば,生前卒中發作を呈したるものに就ては略同數である。但し両者何れが多いかに就ては,人々の經驗が相當喰違つている。臨床的診斷では相當の經驗家でも,一般に溢血の方が軟化よりは多くなつている。かく臨床的診斷では,實際よりも,腦溢血の方が多くなる傾のあるのは,次のような事情のためと思われる。
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