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はじめに
個々の患者において,様々なアレルギー性疾患が異なる時期に発症することがしばしば観察される.乳児期に湿疹やアトピー性皮膚炎,食物アレルギーを発症し,その後,幼児期に,気管支喘息(喘息)を,さらには,学童期にアレルギー性鼻炎を発症することがある.この年代に伴う一連の流れは「アレルギーマーチ」と呼ばれている(図1)1).このアレルギーマーチは,アレルギー性疾患における抗原感作が,経気道的だけでなく経皮的または経腸的にも起きている可能性を示唆しており,興味深い.
近年,経皮感作はアトピー性皮膚炎のみならず,喘息や食物アレルギーなどの多臓器のアレルギー疾患の発症に重要であるとの報告が認められている.実際に,加水分解小麦を含む石鹸の使用により小麦摂取時の食物依存性運動誘発性アナフィラキシーが多発した例はまだ記憶に新しい2).それ以前にも,ピーナッツオイルの経皮的侵入により感作が起こり,ピーナッツアレルギーを引き起こすことも報告されている3).これらは,皮膚からの感作により全身症状を引き起こす可能性があることの典型例である.その病態機序としては,いったん獲得した経口免疫寛容が何らかの原因で破綻することによりアレルギー反応を生じたと考えられており,その一端に経皮感作が関与することが示唆される.また,外界からの刺激に対してバリア機能を失った皮膚で起こりやすいとされており,皮膚のバリア機能に関わるフィラグリンをコードする遺伝子異常が注目されている4).気道上皮にはフィラグリンの発現はないが,この遺伝子異常を有する人に喘息が高率に認められることより,フィラグリンの遺伝子異常によるアトピー性皮膚炎の合併がその後の喘息の発症に影響を及ぼしている可能性が注目されている5).
一方,腸管感作では,腸内細菌叢が宿所の免疫応答の成立に重要であることも明らかにされており,その破綻の結果として,アレルギー性疾患との関与が注目されている6).近年,先進国において乳幼児でのアレルギー性疾患の増加が問題視され,腸管免疫との関与が示唆されている.さらに,腸管免疫を特徴づける免疫応答として,経口免疫寛容が知られており,喘息やアレルギー性鼻炎7)の治療に試みられている.
以上のことから,喘息の発症予防や寛解導入を達成するためには,気道のみならず,皮膚や消化管からの免疫学的アプローチも重要になると考える(図2)8).
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