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はじめに
特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)は厚生労働省特定疾患に指定されている呼吸器難病である.なかでも特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)は慢性かつ進行性の経過をたどり,高度の線維化が進行して不可逆性の蜂巣肺形成を来す予後不良の疾患である1).IPFの疾患概念の確立に伴い,従来の炎症を中心とした病態仮説が疑問視されるようになってきた.炎症の抑制を期待して投与されるステロイド,免疫抑制剤などのIPF治療における有効性に限界があることは実感するところであり,また免疫能低下による感染症のリスクの増大やステロイド減量に伴う急性増悪が問題となることも多い.IPF患者に対してプレドニゾロン,アザチオプリン,N-アセチルシステイン(NAC)の3薬剤の組み合わせを,NAC単剤,プラセボと比較する試験が最近米国で行われたが,3薬剤の投与を受けた群で有意に死亡率が増加したことから,同試験が中断されたことが報告された(PANTHER study)2).
このようにIPFの炎症病態への介入が困難ななかで,線維化病態に関与するtransforming growth factor(TGF)やplatelet derived growth factor(PDGF)などを抑制するピルフェニドンの抗線維化作用に期待が持たれている.2つの国内臨床試験では,肺活量の低下を抑制し,無増悪生存期間を延長し,また,急性増悪を抑制する可能性が示唆されている3,4).この結果を受け日本では2008年にピルフェニドンのIPF患者への使用が可能になり,現在欧州,韓国,インドで相次いでピルフェニドンが上市している.IPFの病勢の抑制に抗線維化作用をもつ薬剤への期待が集まるなか,新たな薬剤として,低分子の線維化キナーゼ阻害薬であるBIBF 1120の開発が進められている.本稿では抗線維化薬であるピルフェニドンと,現在グローバルな第Ⅲ相試験が進行中のBIBF 1120を中心に概説する.
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