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はじめに
先天性心疾患の頻度は,出生時の0.4~1%と言われている.そして近年の産科医,新生児科医,小児循環器科医,小児集中治療医そして心臓血管外科医の集学的な治療管理によりその90%を超える症例が成人期に達するようになった.最近の統計で,アメリカ合衆国では成人期に到達した先天性心疾患(成人先天性心疾患)の概数は100万~300万人と言われ1),これは小児期の先天性心疾患症例数を凌駕している2).これには過去20年における外科手術手技の改善とともに,複雑心奇形に対する生存率が劇的に向上したことが大いに関与している2~4).さらに外科手術のみならず,カテーテル治療や外科との協力のもとに行われるハイブリッド治療の開発は重要な治療成績向上の因子である.また以上の治療を支えるのは集中治療管理であり,この進歩も成人期への到達率を高めるものである5,6).このように小児期での成績向上が認められ,多くの症例が成人期に到達するにもかかわらず,心房中隔欠損症を除き先天性心疾患の症例は一般の生命予後よりも短いという報告がある7).小児期に行った症例が成人期に到達し,しかもその症例数が増加するにしたがって遠隔期の合併症が明らかになり,様々な問題が生じてきたことも事実である.心疾患だけでなく,多臓器にわたる全身状態の把握も重要で,もはや先天性心疾患という枠を越え,多科にわたる集学的な治療が必要であることは明確である.小児科でも循環器科でもなく成人先天性心疾患科という新たな診療科単位での治療が不可欠である.ここには先にも述べたように妊娠,出産,さらには精神科および精神カウンセリングの必要性も生じるのである.このように多岐にわたる領域のうちこの項では成人先天性心疾患を外科の立場から,再手術も踏まえて考えていきたい.
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