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小児期の慢性疾患は,成人となっても経過観察,治療がしばしば必要になる.小児期の血液疾患,神経疾患などの小児慢性疾患と同様に,小児心血管疾患(先天性心疾患,川崎病後冠動脈瘤など)は,成人になっても継続的な経過観察が必要なことが多い.加齢とともに心血管疾患が悪化したり,不整脈などの新たな合併症を伴ったりして,治療が必要となることも少なくない.
内科,外科の発達の恩恵を受け,多くの先天性心疾患患者が,成人となることが可能となり,わが国では,既に45万人以上の成人先天性心疾患患者がいる.先天性心疾患は,生産児の約1%に発生するため,日本では年間1万人あまりが生まれ,そのうち90%以上が成人する.したがって,今後,成人先天性心疾患患者数は約5%の割合で増加し続けると予想されている.日本では,1980年頃は,先天性心疾患といえば,子供の病気だったが,1997年には,成人患者数と小児患者数は同数になった.さらに,2020年には,成人患者数は,小児を遙かに凌駕して,先天性心疾患というと,成人の病気の一つとなると予想されている.すでに,米国のAmerican Board of Internal Medicine(ABIM)では,成人先天性心疾患を,内科の専門分野の一つと認めており,2~3年以内には,成人先天性心疾患の専門医制度が発足する.基本的な専門医の要件は,内科専門医あるいは小児科専門医である.日本では,日本成人先天性心疾患学会学術集会の際の教育講演,成人先天性心疾患セミナー,成人先天性心疾患症例検討会が定期的に開かれ,若い医師,医療従事者の教育に力を入れている.成人先天性心疾患学会が独自に学術集会を持っているのは日本だけである.日本循環器学会の学術委員会のなかに成人先天性心疾患部会ができ,今後,広くこの分野の普及活動が行われる.循環器内科を中心とした,成人先天性ネットワークができ,現在,22施設の循環器内科が,成人先天性心疾患の診療を正式に開始している.このような,内外の動向をみると,成人先天性心疾患は,日本でも近い将来に内科の一分野となることが強く期待される.
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