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レニン・アンジオテンシン系(RAS)は,交感神経とともに循環調節において中心的な役割を果たす神経体液因子である.いまや全身主要臓器保護という立場に立った場合に,RAS遮断抜きには語れないのが現状である.1898年にウサギ腎抽出液が昇圧作用を有することの発見に端を発して,現在まで様々な新しい発見が脈々と続いてきた.腎血流量の低下,ナトリウム濃度の低下および交感神経刺激により腎緻密斑に存在する傍糸球体細胞からレニンが分泌され,肝で産生されたアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに,さらに肺などに存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)により活性型のアンジオテンシンIIとなり,RASが生理活性を発現することはよく知られている.これら一連の反応は循環血中で行われると考えられてきたが,心臓や腎臓など重要諸臓器においても局所的にRASの活性化が進行することが判明した1).アンジオテンシンIIの産生経路にはキマーゼ,カテプシンGおよびカリクレインなど非ACE系も関与することが明らかとなった.そのなかでもキマーゼはヒトにおいてACEと共にアンジオテンシンII産生の主たる経路である2).キマーゼは肥満細胞などに存在し,組織RASの活性化において重要な役割を果たす.最近の発見は,(プロ)レニン受容体,アンジオテンシン関連物質によるRASの自己調節機構およびアルドステロンの役割であろう.(プロ)レニン受容体は組織プロレニンと結合して非蛋白融解的にプロレニンを活性化し,組織RASを亢進させる3).ラットではアンジオテンシンII非依存的にMAPキナーゼ系を活性化することも知られている.Ang(1-7)はアンジオテンシンIIとは逆の血管拡張作用を有するペプチドで,ACE2により産生される4).アルドステロンは,心血管系線維化やリモデリングを来すリスク・ホルモンであるが,RAS非依存的に産生される経路が明らかとなってきた5).
本企画では,最近のRAS研究の進歩と代表的な病態におけるRASの最新知見を専門家に解説していただくこととする.
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