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糖尿病は,高血圧,心筋梗塞,慢性腎不全などの心血管リスクを増大させることが良く知られているが,心不全発症の強力な予測因子でもある事実は意外と知られていない.しかし実際には糖尿病患者は非糖尿患者に比べ男性で2倍,女性で5倍の心不全発症リスクを有する1).AHA/ACC慢性心不全治療ガイドラインでは糖尿病が心不全発症の高リスク例(Stage A)と位置付けられており,心不全発症予防のための治療介入の必要性を強調している2).糖尿病患者の心不全の原因として,動脈硬化の進行に伴い増加する冠動脈疾患や細小循環障害が関与することは良く知られているが,このような冠動脈疾患を介さない,糖尿病自体による直接的な心筋障害,すなわち糖尿病性心筋症の存在も注目されている3,4).糖尿病性心筋症では初期には左室収縮能は保たれており,左室拡張不全を初発症状とすることが多い.
最近糖尿病の新しい治療薬としてわが国でもDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬あるいはGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬などインクレチン関連治療薬の承認・販売が開始された.インクレチンとは食事摂取に伴って消化管上皮細胞より分泌され膵β細胞に作用し,インスリン分泌を促進させるホルモンの総称である.これには小腸下部のL細胞から分泌されるGLP-1と,小腸上部のK細胞から分泌されるGIP(gastric inhibitory polypeptide)があり,グルコース依存性に膵β細胞からのインスリン分泌を促進させ,グルカゴン分泌を抑制することにより低血糖を誘発することなく食後高血糖を是正し,血糖降下作用を発揮するとされる.
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