Japanese
English
今月の主題 糖尿病の病態解析
話題
インクレチン
Incretin
森 豊
1
Yutaka MORI
1
1東京慈恵会医科大学附属第三病院糖尿病・代謝・内分泌内科
キーワード:
GIP
,
GLP-1
,
DPP-4
Keyword:
GIP
,
GLP-1
,
DPP-4
pp.1058-1062
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102392
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1 . インクレチンとは
1964年,健常人に対するブドウ糖の経口投与が経静脈投与に比べ,インスリン分泌をより効果的に促進することが,Elrickら1)とMcIntyreら2)により報告された.この現象は,ブドウ糖に応答して腸管から何かの因子が分泌され,膵内分泌細胞を刺激してインスリン分泌を促進するためと理解され,インクレチン効果と名付けられた.
“インクレチン”とは,食事摂取に伴い消化管から分泌され,膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称で(INCRETIN=INtestin seCRETion INsulinの略語で,1929年に命名3)),これまでにGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)の2つのホルモンが“インクレチン”として機能することが認識されている.これらはいずれもグルカゴン/セクレチンファミリーに属し,お互いに類似したアミノ酸配列を有するホルモンで,GIPは上部小腸に存在するK細胞から,GLP-1は下部小腸に存在するL細胞から分泌される(図1)4).食物を摂取したという情報がインクレチンの分泌を介して速やかに膵β細胞へと伝達され,インスリン分泌を刺激し,食後の血糖上昇を抑え,血糖値を一定に保っている.GIPとGLP-1は,血中ブドウ糖濃度が高い場合にはインスリン分泌を促進するが,血中ブドウ糖濃度が低い場合にはインスリン分泌を促進しない(図2)5).すなわち,低血糖のリスクが低く,安全に食後高血糖を是正することが可能である.
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