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特集 糖尿病治療薬アップデート―最近の進歩を知る
Ⅲインクレチン関連薬
―どこまでインクレチン治療を継続できるか―基礎の面から―インクレチン関連薬のβ細胞保護作用
Beneficial effects of incretin therapy on pancreatic β cells
水上 浩哉
1
1弘前大学大学院医学研究科 分子病態病理学
キーワード:
①インクレチン
,
②DPP-IV阻害薬
,
③β細胞容積
,
④β細胞死
,
⑤β細胞新生
Keyword:
①インクレチン
,
②DPP-IV阻害薬
,
③β細胞容積
,
④β細胞死
,
⑤β細胞新生
pp.44-49
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101438
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2型糖尿病の病因の一つに膵β細胞の容積の減少がある(Tips 1).ヒトにおいては30~50%程度のβ細胞容積の減少が知られている1~3).その機序には高血糖からの糖毒性,脂質異常からの脂肪毒性が想定されている.しかしながら,糖毒性,脂肪毒性を軽減することのみでβ細胞容積が回復するかとなると,話はそう簡単ではない.例えば,インスリン分泌の改善を促進するスルホニルウレア薬,インスリン抵抗性を解除するPPARγアゴニスト,脂質異常の改善を目的としたスタチンの投与によっても,2型糖尿病におけるβ細胞容積の改善は達成されていない.このことは,β細胞容積改善,保護には従来の経口薬による2型糖尿病治療薬による血糖や脂質のコントロールだけでなく,さらにβ細胞の保護,増殖を促すプラスアルファが必要であることを意味している.
インクレチン治療はβ細胞を標的とした治療である.インクレチンにより,食事摂取後のインスリン分泌の増加が起こる.げっ歯類のさまざまな糖尿病モデルにおいて,同時にβ細胞容積の脱落阻止もしくは回復を達成している.インクレチンに対する最も大きな期待は,多くの糖尿病治療薬では達成されていないヒトにおけるβ細胞容積の保護,増加である.そのためには,ヒトにおけるβ細胞の増殖動態を知ることによりインクレチンによるβ細胞保護効果について理解しやすくなると考えられる.
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