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東日本大震災の発災から約1年半が経過した.亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに,今なお避難生活を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げる.今回の海溝型大震災の被害の特徴は,人的・物的被害の多くが津波によって惹起された点である.人的被害の約6割,物的(家屋)被害の約5割が宮城県で発生したが,大津波に続く寒冷な気候下での避難生活,海水の誤嚥による肺炎,薬剤の喪失による循環器疾患の悪化,ライフライン喪失による生活習慣病の悪化,慢性期までに及ぶ肉体的・精神的ストレスなどが複合的に働き,循環器・呼吸器疾患に大きな影響を与えた.この状況は岩手県沿岸部でも同様であったが,福島県では福島第1原発事故による広域にわたる放射能汚染も生じ,厳しい見通しとなっている.
この東日本大震災では,医療者も災害医療活動に従事するとともに,多くのことを学んだ.高い確率で生じると予想されていた宮城県沖地震であったが,防災訓練が役に立った面と,想定外の事態に多くの反省点が生じた面があった.医療に従事する者として,今回の大震災での詳細な記録を後世に残すことは重要な役目であると思われる.今後,今回の大地震と同じ海溝型地震である東海―東南海―南海大地震が高い確率で起きることも指摘されている.大震災そのものを予防することはできないが,被害を最小限に止める減災・免災の視点がこれからますます重要になると思われる.良い例が,今回の大地震で最初に到達する弱いP波を感知して全列車が緊急停止し,一人の乗客も犠牲にならなかった新幹線技術である.世界に誇ってよいわが国の最新技術である.今後の災害医療もこのような減災・免災の視点がますます重要になるであろう.
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