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早期再分極とは何か
心筋の活動電位第2相(プラトー相)において,全ての心室筋が同じ膜電位レベルに脱分極すると電気ベクトルは消失し,ST部分は基線に戻る(図1a).しかし,40歳以下の若年者においてはいずれかの誘導(特にV1-3)で生理的にJ点が上昇していることが多く,何らかの原因により内膜から外膜方向への電気ベクトルが形成されている.これは以下のような機序で説明される.すなわち,①外膜側第0相(脱分極ピーク時)の電位が内膜のそれより低い,②外膜側が第1相の早期に再分極を開始し,膜電位レベルが内膜側のそれより低くなる,③外膜側に豊富な一過性外向き電流によってノッチ(J波)が形成される,の3つである(図1b,c,d).②と③は早期再分極という定義に該当するが,①は不完全な脱分極と言うべきかもしれない.さらに,生理的なJ点上昇を認める誘導でST部分は右上方に向かう.これはT波に移行するに従い,内-外膜間の電位差が拡大していくことを示し,外膜側の第2-3相の傾きがより急峻であることと関連する(図1c).このようにJ点(ST)の上昇や陽性のT波は内膜-外膜間の活動電位の形態や持続時間の違いによって説明され,多くは生理的な現象と考えられてきた1).しかし,近年,特発性心室細動と診断された患者の30~40%に下壁,側壁誘導のJ点上昇(J波の形成)が認められることが明らかになり,大きな注目を浴びている(図2).また,これらはBrugada症候群との関連や類似性も示唆され,同症候群も包括したJ wave syndromeという概念も提唱されるようになった.
本稿では,まず早期再分極症候群の疫学と病態について記述し,その後,Brugada症候群を包括したJ wave syndromesという考え方にも言及する.一方,QT短縮症候群は活動電位の短縮が疾患の本態であり,広義の意味で捉えると早期再分極症候群のひとつかもしれない.しかし,ほとんどすべての心筋の活動電位が極端に短縮する病態は極めて特異であり,今回は他稿に譲ることとする.
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