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特集 iPS細胞を用いた心臓病の診断と治療
iPS細胞由来ヒト再生心筋の電気生理学的解析の現状と問題点
Electrophysiological Characterization of Human iPS Derived Cardiomyocytes:Current status and issue
古川 哲史
1
,
黒川 洵子
1
Tetsushi Furukawa
1
,
Junko Kurokawa
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学
1Department of Bio-informational Pharmacology, Medical Research Instisute, Tokyo Medical and Dental University
pp.465-470
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101953
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はじめに
内閣府ではヒトiPS細胞の医療応用の可能性として,下記の3つを挙げている(表1).
①iPS由来ヒト細胞を用いた薬物の毒性・効果の評価.
②疾患iPS由来ヒト細胞を用いた病態解明と治療法開発.
③iPS由来ヒト細胞を用いた組織再生.
本特集において,②,③は別の章で取り上げられるので,筆者らはiPS細胞由来ヒト再生心筋の電気生理学的解析に加えて①に言及する.
従来薬物の毒性・効果の評価は,動物細胞を用いて行われてきた.ところが,動物とヒトでは薬物の代謝系も異なっており,毒性・薬効を十分に評価できていたとは言い難い.事実,動物実験段階では見つかっていなかった副作用が臨床試験で見つかることはしばしば起こることである.逆に言うと,動物実験では薬効が見つからなかった化合物にヒトでは重要な薬効が存在するものが見逃されている可能性もありうることになる.そこで,iPS由来ヒト細胞は,ヒトの細胞を使って薬物の評価が可能となることから,製薬業界を中心として大きな期待が寄せられている.なかでも期待が大きいのが心毒性の評価系である.図1に市場からリコールされた薬物のリコール原因を示す.肝毒性とともにQT延長による不整脈が最多の原因となっている1).そこで,本稿ではiPS細胞由来ヒト再生心筋の電気生理学的解析に加えてQT延長性副作用への応用に関する現状と問題点を概要する.
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