整形トピックス
ヒトiPS細胞由来純化幹細胞を用いた末梢神経再生
木村 洋朗
1
,
名越 慈人
1
,
中村 雅也
1
,
佐藤 和毅
1
,
黄地 健仁
2
,
芝田 晋介
3
,
岡野 栄之
3
1慶應義塾大学整形外科
2慶應義塾大学歯科・口腔外科
3慶應義塾大学生理学
pp.434-434
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_434
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末梢神経損傷において,端端縫合することが困難な広範囲欠損例に対する現在の標準治療は自家神経移植である.しかし,自家神経の採取に関しては,採取部の脱落症状や採取可能な神経長の限界,手術時間の延長といった問題点があり,自家神経に代わるものとして同種神経や人工神経の研究がすすめられてきた.神経欠損部を管腔構造の人工神経で架橋すると,管腔内にフィブリンマトリックスが形成され,線維芽細胞や新生血管そしてSchwann細胞の足場となり,軸索再生が導かれる1).本邦では現在2種類の人工神経(ナーブリッジおよびリナーブ)が臨床的に使用可能であるが,長距離欠損例や運動機能回復における成績は芳しくない.近年では,人工神経に細胞移植を組み合わせた,いわゆるハイブリッド型人工神経が人工神経単独に対して神経再生や機能回復が促進されるということが明らかになっており2),末梢神経障害に対するさまざまな細胞移植治療の研究結果が報告されている.
末梢神経障害に対する細胞移植として過去に多く行われてきたものが,Schwann細胞移植である.Schwann細胞は末梢神経軸索の髄鞘を形成・維持するグリア細胞であり,末梢神経損傷の再生過程においては,組織修復や再生軸索の誘導,再髄鞘化などを担い,神経再生に必要不可欠な細胞である3).人工神経にSchwann細胞移植を組み合わせることでより神経再生が促進されたとの報告は多いが2,4),Schwann細胞の十分な細胞数の確保や維持が困難であり,臨床応用においては課題が多い.
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