Japanese
English
Bedside Teaching
循環器疾患の遺伝子診断
Genetic Diagnosis for the Cardiovascular Disease
森田 啓行
1
Hiroyuki Morita
1
1東京大学大学院医学系研究科健康医科学創造講座
1Department of Translational Research for Healthcare and Clinical Science, Graduate School of Medicine, University of Tokyo
pp.817-823
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101763
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はじめに
遺伝子シークエンス解析技術の飛躍的発展に伴い,より迅速で安価な遺伝子解析が「技術的には」可能になってきた.しかし,遺伝子配列を明らかにしたところでそれらがどのような病態と対応するのかを明らかにしなければ「遺伝子診断」とは言えない.そもそも循環器領域では心筋梗塞など多遺伝子性疾患の頻度が高く,それに比して心筋症や先天性QT延長症候群など単一遺伝子疾患の頻度は低い,という事情がある.多遺伝子性疾患の遺伝リスクに関して,Genomewide Association StudyによるSNPs同定が加速度的に進んでいるとはいえ,現在進行形であり臨床応用には未だ遠い.それに対して,心筋症や先天性QT延長症候群など単一遺伝子疾患は過去20年間の研究により遺伝子診断を現実化するに足るデータが蓄積されている.ところが遺伝子変異さえ判明すればすんなりと遺伝子診断に持ち込めるであろうと当初予想されたこの単一遺伝子疾患領域でさえも,研究が進むにつれて様々な困難,限界,例外が浮き彫りになってきた.循環器疾患領域において,現時点で遺伝子診断として保険償還されるのは先天性QT延長症候群とFabry病だけである.
本稿では循環器疾患領域における遺伝子解析研究のこれまでの進歩を概観したうえで,それらのデータが現在どの程度診療に貢献しうるかをまとめ,遺伝子診断に直結させるには今後何が必要かを考察する.
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