巻頭言
時代は変わる―しかし,人はなかなか変われない
伊藤 浩
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学
pp.645
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101740
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「労作狭心症に対する冠動脈インターベンション(PCI)は生命予後を改善する」.今でもこう考えている医師がいるのではないでしょうか? 適切な薬物療法を施行していればPCIをしてもさらなる予後改善効果がないことがCOURAGE試験で示されました.FAME試験では有意ではない狭窄に対するPCIは逆にイベントを増やすことも報告されました.「このまま放っておくと狭窄が進行して心筋梗塞になります.だから血管を拡げましょう」.今でもよく使われるセリフです.生命予後は狭窄病変の進行よりも新規病変に由来する心血管事故によって決まります.したがって,PCIで満足せずにしっかりと二次予防を行ってこそ,生命予後の改善が得られます.PCI専門医こそ二次予防のプロであれ.
では,薬物療法はどうでしょう.血行再建後にもかかわらず硝酸薬が使用されている症例をよく見かけます.硝酸薬には冠動脈事故の予防効果はありません.逆に,心筋虚血の改善とは関係のないスタチン,抗血小板薬,RA系阻害薬に冠動脈事故の予防効果があります.β遮断薬も心筋梗塞の二次予防に有効であり,欧米のガイドラインでは推奨されています.しかるに,わが国では降圧効果が劣る,副作用が怖いなどの理由であまり使われていません.エビデンスのないβ遮断薬が使用されているケースも目立ちます.薬物療法が変化していることに対する再認識が求められています.
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