扉
首は横になかなか振れない
pp.9
発行日 1957年11月15日
Published Date 1957/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910472
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或る昼休みの時間のことでありました。汚れた手を洗いに洗面所にいつたところ,お茶碗を洗つていた若い女子事務員が2人,お父さんかおぢいさん位の年配の男の事務員の人と何かたのしそうに話をしていました。手についたインクを懸命におとしながら聞くともなしにきいていると……
「ネ,だから首は縦にはふれる,たやすくふれるけれども,なかなか横にはふれないものなんですよ。横にふることはむつかしい,そこで,あなた方若い人達は気をつけて,まちがいを起さないようにしなければいけないわけですよ。」「そうね,そういえばそうネ。」「すべての人間関係がそうなんですね。」「そうです,そうです,よく考えてネ,今日はこれでおしまい。」「どうもありがとうございました。」……男の人が出ていく時,私は黙つて笑つて眼であいさつをして,さて,自分でもそのことをもう一度考えてみました。
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