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急性心筋梗塞症患者に対して再灌流療法が広く臨床現場で行われるようになって既に4半世紀以上が経過した.以前は安静臥床が主で合併症対策に重きを置いた守りの治療が行われていたが,再灌流療法時代になり梗塞責任血管の血流を再開することで積極的に梗塞サイズを縮小するという攻めの治療が主力となった.Primary PCIが一般的となり,TIMI 3達成率も90%以上を超える状況で2000年前後までは死亡率は着実に低下してきたが,この数年は年齢などを補正したうえでもさらなる低下はみられないという報告が欧米のみならず本邦でもみられる.このように,従来からの治療方針の単なる延長では予後改善効果の向上について多くは期待できないと思われる.このため,ブレイクスルーとして予後不良となる因子のさらなる解明や新たな治療の取り組みが必要と思われる.
その一つとは,欧米では積極的に実行されている,より早い再灌流を目指した院内外での救急医療体制の構築・改善である.そのなかでプレホスピタル12誘導心電図記録が病院内でのPCIを中心とした治療時間の短縮に有用とされているが,本邦での施行はごく一部に限られている.また,早い再灌流という点では発症早期により有効性の高い血栓溶解療法も状況に応じては見直されてもよいと考える.虚血再灌流障害において再灌流前のischemic preconditioningは虚血障害を軽減し再灌流後の梗塞サイズを縮小することは確立されているが,臨床現場でわれわれが介入できるのは主に虚血障害に基づく再灌流障害の軽減である.理論上ならびに動物実験で有効であった多くの薬剤が臨床検討されてきたが,有効性が認められた薬剤は少なく,その不同一性の機序を明らかにするとともに新たな薬剤の開発が望まれる.再灌流時生存心筋が多く残存している場合には,再灌流障害に対する対策がより重要となってくると思われる.また,最近になってremote ischemic conditioningやpostconditioningの概念が提唱され一部臨床応用されており,その意義についても明らかにしていく必要がある.この他にも再灌流時に生じる血栓および冠動脈プラークの遠位塞栓を予防する目的でデバイスが使用されている.このなかでは最も簡易なmanual thrombectomyの有効性はほぼ確立されているが,その他のデバイスでは一定の見解が得られていない.
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