Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
総務省消防庁によると,2008年中に救急搬送された心肺機能停止症例は113,827件であり,うち心原性のものは63,283件であった1).SOS-KANTOでの報告2)では,院外心臓性心停止成人患者における自己心拍再開率は29%で,その社会復帰率は10%である.すなわち,病院到着時に自己心拍が再開していても約90%の患者は死亡しているか,何らかの神経学的な異常を呈していることとなる.病院到着時に自己心拍が再開していない患者は,当然,生存率や社会復帰率は極めて不良となる.そして,むしろこのような患者が大部分であり,われわれはさらに積極的な,かつ先進的な心肺脳蘇生法が必要とされているのである.
2000年にAHA(American Heart Association)/ILCOR(International Liaison Committee on Resuscitation)からEBM(evidence based medicine)に基づく心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;CPR)と救急心血管治療のための国際ガイドラインが初めて報告され,2005年に改変された3,4).そのなかで,蘇生後症候群の治療として低体温療法がEBMレベルClass 2aとして初めて登場し,その重要性がクローズアップされた.それは今までの『心肺蘇生』から『心肺脳蘇生』までを含めた包括的な集中治療を目指しているのに他ならない.この低体温療法を駆使することで,神経学的な転帰を改善させられる可能性が見出されつつある.ただし,その適応,方法,効果は未だに未知数であり,先進的な施設においても手探り状態であるのが現状である.
本稿ではこの先進的な脳蘇生法である低体温療法について解説する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.