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Current Opinion
パーキンソン病治療薬と弁膜疾患
Dopamine Agonists for Parkinson's Disease and Valvular Heart Disease
羽田 勝征
1
Yoshiyuki Hada
1
1榊原記念クリニック循環器内科
1Department of Cardiology, Sakakibara Memorial Clinic
pp.89-92
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101617
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パーキンソン病治療薬と弁膜疾患をめぐる最近の話題
薬剤性弁膜症の歴史は麦角系アルカロイドの使用に始まる.大麦,小麦,ライ麦などの穀物の穂先に寄生する麦角菌によって作られた黒い角,ないし爪状の菌核は麦角と言われる.この麦角は種々の薬理学的活性物質を含んだアルカロイドの宝庫で治療薬として利用されてきた経緯がある.しかし,偏頭痛特効薬ergotamine,methysergideによる後腹膜線維症,胸膜炎,収縮性心膜炎,弁膜症1),一時期,発売されたやせ薬(fenfluramine,phentermine)による弁膜症2)は麦角系薬物による副作用で,組織学的変化はカルチノイド症候群でみられるものと同一のものであった.
パーキンソン病治療薬である麦角系ドーパミンアゴニスト(DA)(現在はpergolideとcabergoline)による弁膜症発生の歴史はまだ新しい.2002年の弁置換例を含めたpergolide内服による3例の症例報告3)以来,散発的になされていたが,注目を集めたのは2007年のNew England Journal of Medicineに掲載された2論文4,5)以降である.ラットにセロトニンやpergolideを投与すると弁膜症が発生することが証明されており6),わが国では2007年から7),欧州では2008年から治療開始前後の心エコー検査が義務付けられ,かつ欧州ではpergolideとcabergolineの最高用量が3mg/日までと制限されたため8),かつてほどの弁膜症発症はないと思われる.しかし,最近でも症例報告がないわけではない9,10).
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