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はじめに
“ヒトは血管から老いる”とはウィリアム・オスラー(1894-1919)の言葉であるが,わが国の死因第二位,第三位は心疾患と脳血管障害であり,いずれの疾患も血管の動脈硬化に伴って発症する疾患である.2009年高血圧治療ガイドライン(Japanese Society of Hypertension Guidelines:JSH 2009)が改訂され,中心動脈圧やAIの重要性が着目された1).この背景には2006年に発表された大規模臨床試験ASCOT-CAFÉ試験がある.この臨床試験において約100年来続いてきた従来の標準的な上腕動脈血圧測定法の盲点が明らかにされた.つまり上腕動脈で測定される収縮期血圧では現れない血圧差の存在である2).この試験は高血圧患者を対象とし,血管拡張薬であるアムロジピンベースの治療群と交感神経遮断薬であるアテノロールベースの治療群を比較し,末梢の収縮期血圧の低下および脈圧の低下は両群間に有意差がなかったにもかかわらず,推定収縮期中心動脈血圧,中心脈圧ともにアムロジピンベースの治療群で有意に低下が認められた.さらに複合エンドポイント(腎障害発症を含む心血管イベント,血行再建)の多変量解析では推定収縮期中心動脈血圧のみが関連を認めており,従来の上腕で測定される血圧では評価できない中心血圧に対する降圧効果の差が示唆された2).続く2007年Hypertensionに掲載されたRomanらによるStrong Heart Studyでも,上腕動脈脈圧より中心脈圧が心血管イベントの強い予後予測因子であることが示された3).高血圧治療の重要性は,高血圧に伴い生じる血管硬化によって引き起こされる臓器障害,大血管病から腎機能障害,虚血性心疾患,末梢動脈疾患をいかに回避するかが大切であり,そのツールとして今後中心血圧やAugmentation Index(AI)を臨床上用いた治療が必要になってくると考えられる.
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