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特集 循環器疾患の逆リモデリング
興奮・伝導異常の逆リモデリングの分子生物学的機序
Molecular Mechanisms of Reverse Electrical Remodeling
中谷 晴昭
1
Haruaki Nakaya
1
1千葉大学大学院医学研究院薬理学
1Department of Pharmacology, Chiba University Graduate School of Medicine
pp.667-671
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101507
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はじめに
不整脈は,心肥大,心不全,心筋梗塞など多くの心臓の器質的疾患に伴って起きることが多い.その不整脈発生の基盤には,それらの病態に伴う病理組織学的変化のみならず,イオンチャネルを中心とした心臓の興奮伝導に関わる分子の量的および質的変化の存在,すなわち電気的リモデリングと呼ばれる機能的変化があると考えられている.また,心房細動により高い興奮頻度の不整脈が持続すると,それによってやはり電気的リモデリングが起き,いわゆる“AF begets AF”という状況となる1).これは,一度発作性心房細動が起きるとそれが再発しやすくなり,最終的には持続性心房細動に移行するという現象である.このような電気的リモデリングが進行した状態では,抗不整脈薬を用いた治療であるダウンストリームアプローチによって一時的にその不整脈を抑制できたとしても,慢性的に抗不整脈薬で治療しようとする場合,その薬物の催不整脈作用という副作用が出現しやすく,最終的には生命予後の改善につながらないことが,今までの多くの大規模臨床試験によって証明されている.そこで,不整脈発生の基盤となる電気的リモデリングを解消しようとするアップストリームアプローチが行われる.通常,神経液性因子の調節や炎症の予防によって不整脈の発生を未然に防ごうという試みがなされるが,そのためには電気的リモデリングの発生の分子生物学的機序を十分に理解し,それに対する有効な治療戦略を考慮しなければならない.
本稿では,現在までに明らかとなっている電気的リモデリングの分子機構と,それに対するアップストリームアプローチについて概説することとする.
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