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心不全における心室リモデリングの臨床的意義
1. 心室リモデリングの臨床的立ち位置はどこにあるか
心不全領域における心室リモデリングは,心不全における心臓という局所での病態解明につながる足掛かりとなり,また臨床的には強力な予後予測因子であることから,ますますその重要性を増している.見方を変えれば,心不全管理の特殊性がもたらした産物と言えるのかもしれない.
現況の心不全治療は,患者の愁訴に代表されるような目に見えて悪い状態からの脱却を目指す「目に見える治療」と,長期予後改善というエビデンスに基づく「目に見えない治療」とに大別される (図1).前者を達成するには心機能構成要因の是正が求められるが,治療介入そのものが奏効したのかは,症状や徴候の変化を介して「目に見えて」把握することが容易である.一方,ある介入法により一患者の長期予後が改善したか否かを,医療者個人の判断で把握することはほぼ不可能に近く,まさに「目に見えない」アウトカムである.したがって,大規模臨床試験によるエビデンス,あるいはその集大成としてのガイドラインを適宜参照し,確率論的にこれを信じて選択する以外にない.しかし,エビデンスとして示される平均値的な臨床効果が,背景が異なる個々の患者へ同程度にもたらされるわけではない.「目に見えない治療」だと分かっていても,そのアウトカムを「目に見える」形で把握したい,個々に応じた治療を展開したい,と願うのが臨床医の常である.その際に浮かび上がるのが,surrogate markerという手掛かり指標である.心室リモデリング,すなわち心臓の動きや形という「目に見える」指標が,「目に見えない」長期予後を高率に代替できるのではと期待されている.
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