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【小研究】「新入生のシミュレーション実習の評価」から
近頃の『JNE』誌では,新しいテクノロジーを使った教育法がよく取り上げられています。特に2月号では患者シミュレータを利用した研究が過半数を占めました。高い技術や複雑な看護ケースを学ぶ高学年の看護学生に対し,シミュレータ利用教育の効果性を示したエッセイはよく見受けられますが,小研究「新入生のシミュレーション実習の評価」では,技術や知識を一番吸収しやすいと言われている新入看護学生が受講する緩和ケアのクラスが対象となりました。対照群は,先生による体位変換や温熱療法のデモンストレーション後,生徒たちが通常のマネキン(モデル人形)を相手に実践しました。その一方で,介入群は緩和ケアのビデオを見た後,血圧や心拍数がモニターに出るだけでなく,痛みを訴え,生徒の呼びかけに応える高機能シミュレータ相手にケアを施しました。その結果,高機能シミュレータを使った生徒たちは通常のマネキンで実践した生徒よりも,自分のスキルに自信を持つことができました。そして,介入群の生徒たちは,先生の実践ではなくビデオを見たのみにも関わらず,2つのグループの間には学びの満足度には差がありませんでした。初歩の段階で自分の技術に自信を持つことは大切であり,教員の負担を減らすためにも,高機能シミュレータを取り入れた新しい実習法は有効かもしれませんが,高額な為に,この教育法が全国に浸透するにはまだまだ時間が掛かりそうです。
私が学ぶUCSFでは,高機能患者シミュレータ10体およびtelemedicine(遠隔医療)の模擬実験を行えるラボが年初に新設されました。その主要目的はシミュレーション教育の拡大,および「チーム医療の促進」です。そのため多専攻学生皆が隔たりなく自由に利用出来る空間として,皆が集まる図書館に設置されました。また,telemedicineも同時に導入され,僻地や他の病院から電子で送られてくる静止画や動画が映しだされるモニターを通し,高い技術や知識レベルを有した多職種のチームの協働の元,遠隔から医療指示を与えたり受けたりする技術を身につける目的があります。これは,医療が整っていない地域でも,優れた専門性が高い医療チームの指示のもと先端の医療を行え,医療の地域格差を下げることに役立ちます。そして,災害が起こり緊急に専門性の高い医療技術が必要となった場合も,患者の状況を衛生などで画像を飛ばし遠隔の専門家の支持を受けられる事も期待されています。また,私自身が携わる研究の1つにも,テクノロジーを使った新しい試みがあります。この不景気の中,職を失い保険も失う者が後を絶たず,無保険者を対象にしたサンフランシスコ市民病院のHIV患者も3000人を遥かに超え,増加の一方です。そんな忙しいHIV外来病棟で,患者の薬物利用状況の問診のプログラム化の有効性を調べています。薬物利用のような繊細な質問の場合は,面と向かわないコンピュータでの問診のほうがより正確な情報の取得ができ,医療者の負担を減らすことにつながるのではないか,問診票,コンピュータ,医療者と面と向かう問診のどれが,一番薬物検査の結果に近いかを研究をしています。このプログラムは,問診の最後に,リスクレベルによっての簡易介入やソーシャルワーカーの紹介が自動的に行われるシステムになっています。患者の多数が定住する場所や食べる物も満足に無いその日暮らしなので,コンピュータの所持や使いこなせる患者は極稀です。待合室や図書館の無料コンピュータやiPadなどを使い,研究助手のサポートを要する時間,患者のコンピュータを使いこなしや向上心なども含め調査しています。
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