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はじめに
近年の医用イメージング装置の発展は目覚ましく,全身にわたる高精細な断面像をわずか数十秒の間に撮影することが可能となった.例えば,マルチスライスCT装置を用いれば,体幹部のCT像をわずか10秒程度で撮影することが可能である.ここで撮影される画像は,約0.5mm程度の解像度で人体内部の構造を濃淡画像として表現したものであり,異常部位の早期発見,手術支援画像生成,病態の経時変化の把握,臓器の形態解析など,様々な利用が可能である.一方,これらのイメージング装置によって撮影される画像は膨大な情報を含み,これらの画像の効率的な観察法,診断法の開発が試みられてきた.
その一つとして筆者らの研究グループでは,3次元CT像などの3次元医用画像から,あたかも内視鏡で観察したかのような画像を生成する「仮想化内視鏡システム」の開発を1993年ごろより行ってきた1,2).この仮想化内視鏡システムを用いれば,肺の内部構造を「バーチャル」に観察することができ,胸部CT像の新しい利用分野を切り拓くことができると考える.仮想化内視鏡システムは,画像処理技術によって実現されており,工学的な技術が新たなる肺構造理解を可能とし,さらにそれを利用した新しい臨床的応用が生まれているともいえよう.
本稿では,第48回日本呼吸器学会学術講演会において発表した「画像処理とコンピュータビジョンによる肺内ナビゲーション」の講演を基に,呼吸器バーチャルナビゲーションに関して論じたい.なお,本稿で述べる「ナビゲーション」の意味には,いわゆる「カーナビ」の語句で用いられる「目的地までの誘導」の意味でのナビゲーションと,「空間を探索する」(この場合には肺内部の探索)の意味でのナビゲーションの2つがあることに注意されたい.
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