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特集 マルファン症候群
小児期におけるマルファン症候群の診断・管理
Diagnosis and Management of Marfan Syndrome in Children
賀藤 均
1
Hitoshi Kato
1
1国立成育医療センター循環器科
1Division of Cardiology, National Center for Child Health and Development
pp.1133-1139
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101366
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はじめに
小児期のマルファン症候群に関する論文は非常に稀で,そのほとんどは検討症例数が少ない1,2).他方,小児期にマルファン症候群を疑う患者の症状は,年齢に左右され,変化に富む.そのため,小児期マルファン症候群の診断は,慎重に行わなければならない.
マルファン症候群の診断には,現在のところ,Ghentの基準を採用することが標準である.しかし,この診断基準は,腰仙部硬膜拡張の診断にCTまたはMRIが必須であったり,寛骨臼の突出や高口蓋の判断基準があいまいであったりと,実際の外来診察に応用することに窮屈な面がある.また,指極/身長比>1.05は,アジア人への応用が正しいかどうかの疑問もある.かつ,Ghent基準では,骨格の基準が最も大きな要素であるにもかかわらず,小児特有の発達という概念は含まれていない.
他方,小児科を訪れる患者の多くが,「親のどちらかがマルファン症候群の可能性が高いと言われて心配になった」ことを契機にする場合が多い.その「マルファン症候群の可能性」も,「親が解離性大動脈瘤だ」というだけの場合が多い.また,「手足が長く,指も長い」ことだけでマルファン症候群とされているケースも多い.小学校高学年から中学生にかけての第二次性徴期では,痩せ形で,手足が長く,指も長めにみえる体格であることが多いにもかかわらず,指の長さをWalker-Murdoch手首徴候,Steinberg親指徴候から客観的に診断されていることは稀である.日本では,小児期マルファン症候群を多く経験している医師が少ないこともあり,マルファン症候群を疑う根拠,診断のあり方は不十分であり,問題が大きいのが現実である.
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