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特集 マルファン症候群
マルファン症候群・類縁疾患に対する遺伝子診断とTGF-βの意義
Marfan Syndrome and Related Diseases: Genetic tests and TGF-β signal pathway
森崎 隆幸
1,2
,
森崎 裕子
1
Takayuki Morisaki
1,2
,
Hiroko Morisaki
1
1国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部
2大阪大学大学院薬学研究科分子生理病態学分野
1Department of Bioscience, National Cardiovascular Center Research Institute
2Department of Molecular Pathophysiology, Osaka University Graduate School of Pharmaceutical Sciences
pp.1141-1146
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101367
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はじめに
マルファン症候群は,1896年にAntoine Marfanが,蜘蛛状指を有し,痩せて手足が長い5歳女児例につき最初の報告を行った疾患1)であり,高率に大動脈解離を合併し,多彩な表現型を有する常染色体優性遺伝の遺伝性疾患である.遺伝性疾患であることは古くから知られており,病因遺伝子座の同定に引き続いて,1991年には原因遺伝子としてFBN1遺伝子が同定された2).従前は,突然死のおそれのある予後不良な病気と認識されていたが,外科的医療技術や画像的診断技術の進歩,また,分子生物学的研究の進歩などにより,現在ではマルファン症候群の早期診断も可能となり,治療成績は飛躍的に改善してきた.近年,病態生理の理解,関係する分子機構の研究が進み,TGF-β受容体遺伝子の変異でも類似の疾患を来すことが明らかとなったほか,TGF-βシグナルの制御による大動脈瘤の発生抑制などの画期的な治療法開発への期待が高まっている.
本稿では,マルファン症候群および類縁疾患の遺伝子解析の現状と遺伝子診断の意義を紹介し,さらに,遺伝性大動脈瘤の病因としてのTGF-βシグナルの位置付けと役割,また,このシグナル経路の変化に対応した治療への期待について,最近の研究の進歩に沿って概説する.
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