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心電図をめぐる最近1年間の話題
[1]はじめに
心臓の活動電流が体表面まで伝わったものを体表面上の電位差として記録したものが心電図であるが,活動電流によって生ずる磁場を直接捉えたものが心磁図である.繰り返しになるが,心電図は活動電流自体を測定するものではない.臓器ごとに異なる導電率の差異により大きく歪んでいる.例えば肺の直上の電極からは心電波形は計測できない.一方透磁率は臓器にかかわらず均一なため,心磁図が計測する磁場は歪まず,心臓の電磁活動を正確に反映する.単に情報の歪みにとどまらず,心電図は心筋細胞外電流を体表面電位差測定により計測しているが,心磁図は心筋細胞内外両方の電流に起因する磁場を直接測定するという情報量自体に差異が存在する.心電図では計測しえない情報をも計測できる心磁図の特性のほかに,体表面電極が不要であることによる利点がある.例えば電極からのノイズ混入を除外できるだけでなく,直流フィルタにより失われるST偏位情報などを絶対値として計測しうることなどである.
逆に不利な点は心臓磁場は約10-10T以下で,地磁気の約10-4Tと比べ6桁以上小さい信号であるため,心電図では数mVと計測が容易な電位に対し,微弱な磁場検出と環境磁気雑音の除去が必要となる.1963年に数百万回巻いた誘導コイルにより実験的に初めてヒト心磁図が計測された後,超伝導量子干渉素子(SQUID)が開発され,臨床実用に供しうるレベルの心磁波形が磁気シールドルーム内で計測された.超伝導状態を作り出すための液体ヘリウム費用と磁気シールドルーム建設にかかる費用負担が影響しているのか,保険収載されているにもかかわらず,現時点では国立循環器病センターと筑波大学病院の2カ所にしか(研究用は別として)日常診療目的の心磁計は設置されていない.
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