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はじめに
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)を含む急性冠症候群(ACS)に対する再灌流療法であるprimary percutaneous coronary intervention(primary PCI)は,特に早期に施行された場合(受診-再還流時間90~120分以内),冠血流を回復させ,予後改善に寄与する.閉塞血管の血流はTIMI(thrombolysis in myocardial infarction)flow grading system1)で評価されるが,STEMIに対するprimary PCIにおいては,93~96%でTIMI grade3が得られると報告されている(PAMI試験2),CADILLAC試験3)).一方,一部の症例では,primary PCIにて標的血管の狭窄を造影上解除した後でも十分な血流が得られない場合があり,予後不良の予測因子と考えられている.
このように,STEMIに対しprimary PCIを施行しても十分な末梢血流が得られない原因としては以下の要素が単独あるいは複数で関与すると考えられている.
・狭窄,血栓の残存
・血管壁の解離・壁内血腫
・側枝閉塞
・冠れん縮
・末梢塞栓
・急性ステント内血栓形成
・no-reflow現象
・再灌流障害
・梗塞・重症虚血による末梢心筋のviabilityの低下
・心筋細胞または血管内細胞の浮腫
PAMI試験2)では,primary PCI後TIMI grade2以下であった232症例のうち,(50%以上の)狭窄の残存は28%,血栓の残存は26%,血管壁の解離は40%に認められたと報告されている.また,同試験では以下に挙げる項目がprimary PCI後,末梢の十分な血流が得られない(TIMI grade2以下)リスク因子として挙げられている.
・70歳以上
・糖尿病
・発症から再灌流までの遅延
・初回造影でTIMI gradeが1以下
・駆出率:EFが50%未満
・心不全
また,primary PCIを施行されたACS症例1,548例を検討した報告では,入院時のKillip分類とPCI術後のTIMI flow gradeは逆相関するとし4),入院時心不全が重症であるほど冠動脈血流は不良であることが示唆されている.
primary PCI術後も血流改善が十分でない場合,心電図上のST上昇は十分に改善しない(基線に戻らない)場合が多いが,STEMIに対しprimary PCIを施行された連続1,005症例を検討した研究では,42%においてSTが完全に改善していない(ST上昇>1mm)5)と報告されており,さらに,ST上昇が基線に戻らないリスク因子のうち統計学的に有意であったのは,1)前壁心筋梗塞,2)Killip分類class3または4(重症の心不全),3)PCI前にTIMI grade2未満,4)PCI後TIMI grade3未満であるとされている.
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