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はじめに
近年,食生活や生活習慣の欧米化に伴い,動脈硬化を基礎要因とする循環器疾患は著しく急増しており,それによる死亡率は本邦におけるその死因の第二位を占める.一方,この動脈硬化による変性を基質とする大動脈弁狭窄症は,中年から高齢者までの年齢層にその発症の大多数を認める.本疾患は,発症後,加齢とともに緩徐に不可逆的進行をたどるため,症状出現の多くは高齢になってからである.症状が一度出現するとその後の進行は極めて速く,生存率は急速に低下することが知られている.
現在,この重症大動脈弁狭窄症に対する治療法は,外科的治療として開胸大動脈弁置換術(aortic valve replacement;AVR )が定着しており,過去約半世紀もの実績を有する最もスタンダードな治療法とされている.しかし,現在の人口高齢化の背景に併せ,その罹患患者のさらなる急増と高齢化が懸念される一方,重症でありながら加齢に伴う低心機能や種々の併存疾患を理由にハイリスクと判断され,外科的治療の選択肢を拒絶せざるを得ないケースは少なくない.その率は,欧米では既に30~60%にも達する1).
このような外科的治療の非適応症例に対し,現在欧州ではそれに替わる革新的治療法としてカテーテルを用いた生体弁置換術(percutaneous aortic valve replacement;PAVR)が認可され,既に普及しつつある.このデバイスは,2002年Cribierら(Rouen,France)によりデザインされ発表されて以降,様々な変還を経ながらも発展を遂げ,現在経皮的心臓弁置換は循環器インターベンション分野のラストフロンティアともいわれる.本稿では,この経皮的弁治療のこれまでの発展の経緯と現状を紹介する.
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