書評
両室ペースメーカー植え込み手技のTips & Tricks
中川 義久
1
1京都大学大学院医学研究科循環器内科
pp.1014
発行日 2006年6月10日
Published Date 2006/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107583
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
両室ペースメーカー治療は,従来は薬物治療しかないと考えられてきた心不全治療の現場に画期的な変化をもたらした.この治療法は心臓再同期療法(CRT)とも呼ばれ,実効ある治療法として地位を確立しようとしている.
この治療法の発展と普及の過程は,従来の日本での医学領域の新しい治療法での過程とは少し異なるところがあった.それは,権威づけられてはいないが臨床能力の高い若手医師によって多くの仕事がなされたことである.彼らは日常臨床の現場では心不全患者の治療に限界を抱き,その限界を打破したいと望み,かつ虚血性心疾患に対するカテーテル治療の経験からカテーテル操作にも習熟している.さらに不整脈へのアブレーションの知識と徐脈性疾患に対するペースメーカーにも経験豊富であり,そのうえ基本となる心不全への薬物療法も習得している.こういった総合的かつ実践的な高度の臨床能力をもつ者が,いち早く両室ペースメーカー治療のもつポテンシャルを理解し,多くの症例に施術したのである.その結果として,認知・普及の速度が加速した.本書の監修を務める小倉記念病院の延吉正清先生のもとから,編者の安藤献児医師や静田 聡医師の二人をはじめ執筆陣に何人もの人材を輩出していることは,同師の指導が虚血性心疾患だけでなく,広い基盤のうえに教授されていたことを証左しているともいえよう.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.