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IOS(impulse oscillation system)法
気道抵抗(Raw)は通常body plethysmograph法で測定するのがスタンダードとされている.しかし,その方法はbody boxという特殊な機器が必要であり,原法ではpanting呼吸という特殊な手技が必要とされる.被検者が安静呼吸で特別な負担なしにRawを測定する方法が考案されてきた.初めに,Duboisらにより強制振動負荷法(forced oscillation technique;FOT)が考案された.被検者の口から一定の周波数の振動をスピーカーで加え,その時の圧と流量から呼吸器系のインピーダンス(Zrs)を計算した.さらに,信号の位相差からインピーダンスを実数部(レジスタンス,Rrs)と虚数部(リアクタンス,Xrs)に分けて,種々の指標を検討した.当初は,周波数を順次変えて測定したが,種々の周波数の振動を同時に負荷して,高速フーリエ変換(FFT)を用いて一度に解析する方法が使われるようになった(ランダム波オッシレーション).さらに,パルス状の振動を利用して,より詳細な解析が可能となり,IOS法として使用できることになった1).IOSはFOTなどと同様に,口から広い周波数成分を含むパルス波を入射し,その時の口腔内圧と流量(フロー)を記録する(図1).その両者から肺胸郭系のインピーダンス(Zrs)を計算するが,種々の周波数成分を含むので,FFTにより各周波数でのRrsとXrsを計算することができる.図2は市販されているシステムの一例である.
IOSでパルス波を入射した時,通常使われるのは5Hzと20Hzにおける指標であり,5Hzは全気道抵抗(Raw=Rc+Rp)を反映し,20Hzは主として中枢気道抵抗(Rc)を反映するとされている.したがって,末梢気道抵抗(Rp)はRaw(5Hz)-Rc(20Hz)から計算されている.図3はMeadのモデルで,肺胸郭系を7つの成分で表現している.この図をもとに,各指標が肺胸郭系の力学的成分のどれを表現するかを推定してみる.図4は実測例であるが,健常者の場合,Rrsは周波数によらず一定であるが(図4a),これは末梢気道抵抗(Rp)が小さいためである.それに対して,重症COPDの場合は5HzでRrsが最も大きく,周波数の増加とともに減少する.したがって,Rp〔=Raw(5Hz)-Rc(20Hz)〕は大きく計算される.重症COPDではRpが大きいため周波数が増加すると末梢気道の動きは反映されず,中枢気道抵抗(Rc)と気道コンプライアンス(Cb)が反映されていると考えられる.このように,IOSでは中枢気道抵抗(Rc)と末梢気道抵抗(Rp)をある程度分離して評価することが可能である.このことは,疾患の病態を解析する時に有用であるばかりでなく,例えば薬剤吸入負荷をした時に,その薬剤が主として気道のどの部分に作用しているかを推定するのに役立つことを示している.リアクタンス(Xrs)は肺気道系のコンプライアンスとイナータンス(弾性)の両者を反映している(図4b).低周波数(5Hz)での値は,イナータンスの関与が小さいので,肺コンプライアンス(Cl)を表しており,健常者に比べて重症COPDで大きくなる.一般に,周波数の増加とともにXrsは上昇するが,これはイナータンス成分(Ic)が反映されてくるためである.また,重症COPDでリアクタンスが高い周波数まで負値を増すのは,上述のごとく高い末梢抵抗(Rp)のために肺コンプライアンスに代わって気道コンプライアンス(Cb)が反映されるためである.種々の呼吸器疾患におけるレジスタンスとリアクタンスをIOS法とFOT法で測定した結果を示した(図5)1).両者には良好な相関がみられている.
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