Topics Respiration & Circuation
呼吸器疾患とアポトーシス
栂 博久
1
1金沢医科大学呼吸器内科
pp.315-316
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900073
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■最近の動向 アポトーシス(apoptosis)は1971年Kerrらが発表した概念であり,ネクローシス(necrosis)とは異なり,遺伝子によって制御された能動的な細胞死である.アポトーシスは形態学的に細胞核の濃縮化,断片化が起こることにより認識される.過剰のアポトーシスにより起こる病態として,AIDS,アルツハイマー病,心筋梗塞を始めとする再灌流性組織障害,劇症肝炎などが,アポトーシスの抑制により起こる病態として,悪性腫瘍,膠原病などが知られている.呼吸器疾患では,アポトーシスの研究対象は主として肺癌であったが,最近,一般の培養肺細胞や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)におけるアポトーシスの誘導に関する報告がみられるようになった.培養肺細胞ではマクロファージ由来細胞のアポトーシスが確認されており,誘導機構としてp53やBax遺伝子があると報告されている.また,線維芽細胞はそれ自身のアポトーシスも報告されているが,肺胞上皮のアポトーシスを誘導している可能性がある.NO—活性酸素もアポトーシスに関連することが知られているが,マクロファージ由来細胞ではp53の誘導によりアポトーシスを促進したのに対し,ヒト臍帯静脈内皮細胞ではプロテアーゼ(ICE,CPP 32)活性の阻害によりアポトーシスを抑制した.最近,ヒト急性肺傷害や急性肺傷害動物モデルにおいてもin vivoでアポトーシスの誘導が報告されてきている.アポトーシスは,ARDSなどの難治性疾患において病態の進行や組織のリモデリングに関わっている可能性が高く,現在アポトーシスの誘導機構の解析と介入研究による治療の方向性が検討されている.
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