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急性心筋梗塞に対する細胞移植治療をめぐる最近1年間の話題
動物を用いた基礎研究により,急性心筋梗塞(AMI)に対し骨髄細胞を移植する治療法はその後の心臓リモデリングや心機能低下を有意に抑制することが報告されている.機序に関してまだ十分解明されていないが,骨髄細胞移植が有望な治療法として期待され臨床研究が実施されるようになった.しかしながら少数例の報告が多く,無作為化,二重盲検試験により治療効果を検証した報告は少ない.2006年にAMI患者に対し冠動脈内への骨髄単核球(BMC)注入療法を行い,効果を検討した無作為化比較試験の結果が複数のグループから報告された.安全性については問題ないと考えられるが,効果に関してはまだ結論は得られていない.2007年以降も細胞移植に関する臨床研究の結果が報告された1~4).
REPAIR-AMI試験では,ステントによるインターベンション治療(PCI)で再灌流が得られたAMI患者204例を対象にBMCを再灌流後の梗塞責任冠動脈内へ注入し効果を二重盲検試験で検討した3).全ての症例でPCI後3~6日以内にBMCを採取し,一方のグループにはBMCを,もう一方にはBMCを含まないプラセボ液を冠動脈内に注入した.4カ月後の左室駆出率(LVEF)の改善率はBMC群のほうがプラセボ群より有意に大きかった3).1年後の解析でも,総死亡,心筋梗塞,心不全悪化による入院はBMC群で有意に少なかった5).また,4カ月後の梗塞責任血管の冠血流予備能(CFR)はBMC群で有意に改善していた6).ASTAMI試験では,ステントによるPCIで再灌流が得られたAMI患者97例を対象にBMC移植の効果を検討した4).BMC群ではPCI後4~8日以内にBMCを冠動脈内に注入した.6カ月後のLVEF,拡張末期容積,梗塞サイズの変化率はいずれもBMC群とコントロール群の間で有意差はみられなかった4).この傾向は1年後も続いていた7).梗塞サイズの大きな症例やベースラインのLVEFが低値の症例で細胞移植の効果が大きかったとする報告1,2)があり,Penickaらは,広範囲前壁のAMI患者27例を対象にPCI後,BMCを梗塞責任冠動脈内へ注入し,その効果を検討した8).LAD近位部の閉塞により広範囲前壁梗塞を起こし,症状出現から4~24時間以内にPCI治療を受け,LVEF≦50%の患者を対象とした.BMC移植はPCI後,4~11日(中央値9日)経過してから施行された.4カ月後の解析では,LVEF,左室容積,梗塞サイズはいずれもBMC群とコントロール群の間に有意差はみられなかった8).しかし,BMC群で重篤な有害事象(BMC注入前の心室中隔破裂,ステント血栓による再梗塞,胆道系腫瘍,ステント部位とは別の部位での再梗塞など)がみられたため,当初60例(BMC群40例,コントロール群20例)を予定していたが,27例で中止となった.
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