巻頭言
「普通の事」とは何?
橋本 修
1
1日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野
pp.1093
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101147
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2008年8月8日の北京オリンピックの開会式を観て,昔ながらの聖火点灯を懐かしく思う.私は東京オリンピックの時は小学校6年生で,開会式は家庭科教室の畳に座り観ていたのか,あるいは父が涙を流しながらテレビを観ていた記憶もあって家のテレビで観ていたかは,定かではないが,聖火の点灯については,トラックを走ってきたランナーが観客席の階段を駆け上りファンファーレとともに聖火台に点火した場面を鮮明に覚えている.普通に走ってきて,そのまま点火する.「普通の事」が懐かしい.
翻って医学,医療は,と考える.数年前までは,「分子生物学的手法を用いた病態の解明」が頭から離れなかった.今でも,気道上皮細胞の生体防御機能や,反対に炎症を惹起する機能を細胞レベル,マウスレベルである分子を過剰発現させ,あるいは欠損させて分子機能を解析する研究を行いたいと思う.しかし,最近のわれわれを取り巻く環境が,多大な費用と人的資源を必要とする研究を許さなくなってきた.そうであるならば,と考える.一つの分子機能を追求する前に,肉眼,マクロ,ミクロ,分子と生体全体を眺め,研究を組み立てたい,と.そこで,気道上皮細胞の「普通の事」とは,何か?
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