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はじめに
突然死の多くは不整脈死,とりわけ血行動態破綻を来す心室性不整脈(心室細動:VF,心室頻拍:VT)である.
米国では年間30万人から40万人が突然死するとされ,原疾患としては圧倒的に心疾患が多い.心源性突然死の原因は米国では80%以上が虚血性心疾患であるが,わが国では虚血性心疾患は30%にすぎず,心筋症,催不整脈性右室心筋症,心サルコイドーシスなどに加え,Brugada症候群,QT延長症候群などの不整脈疾患も多く含まれ,その背景にはわが国と欧米諸国には差があると思われる.
この致死性不整脈に対し,1980年に米国で植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)の臨床使用が始まり,日本では1996年に保険適用が認められた.ICDの有用性は海外を中心とした大規模臨床試験により検証されてきており,当初は心臓突然死(sudden cardiac death;SCD)のリスクが最も高いVT/VF,あるいは心停止の既往を有する患者の二次予防として,いくつかの無作為割付試験(AVID;Antiarrhythmics Versus Implantable Difibrillators,CIDS;Canadian Implantable Defibrillator Study,CASH;Cardiac Arrest Study Hamburg)が報告された.このなかで抗不整脈薬との比較でICDの明らかな有用性を認めたのはAVIDのみであったが,3つの研究をまとめたメタ解析の結果では,ICDは抗不整脈薬に比して6年間で27%の相対死亡率を減少させた.特に左室機能低下例(左室駆出率35%以下)では有効であったと報告され,ICDの二次予防効果が確立された1).
一方で,ICDの一次予防効果についても1990年代後半から欧米で複数の大規模臨床試験が施行されてきたが,前述のように,日本と欧米との突然死の患者背景は異なっており,海外での大規模臨床試験を日本に外挿できるのかという問題が残されている.本稿では,SCDのハイリスク患者に対するICDの一次予防効果を病態別に海外のデータとわが国のデータを示しながら論じてみたい.
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