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はじめに
わが国において,2002年の統計では1,620万人が耐糖能障害を有し,740万人が糖尿病であると推定されている.このうち,“膵β細胞の破壊的病変により絶対的インスリン欠乏が生じることに起因する糖尿病”と定義される1型糖尿病は約5%程度であり,この場合は外因性インスリンの自己注射が必要となり,基本的に経口血糖降下薬(oral hypoglycemic agents;OHA)を使用しない.一方で,わが国の糖尿病患者の90~95%は,“インスリン分泌低下を主体とするものと,インスリン抵抗性が主体でそれにインスリンの相対的不足を伴う”2型糖尿病であると考えられている.
1920年代にBantingによりインスリンが発見され,実用化されてもなお,糖尿病,特に1型糖尿病の加療は長い間「昏睡(ケトアシドーシスあるいは低血糖)との闘い」であった.その後,1993年に発表された1型糖尿病患者を対象としたDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)1),2型糖尿病患者を対象としたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)2),わが国におけるKumamoto study3)といった臨床研究の結果が相次ぎ,糖尿病による3大合併症(網膜症,腎症,神経障害)に対する血糖コントロールの意味付けが明らかとなり,その進展を抑制する血糖の治療目標が明示された.
こうした「3大合併症との闘い」の時代を経て,最近では,糖尿病を加療する目的として,昏睡,3大合併症に「大血管障害との闘い」が加わるようになってきた.1型糖尿病については,小児期発症患者が30歳以上になると心血管障害による死因が増加し,その死亡リスクは一般人口の10倍以上になることが報告されている4).また,わが国での2型糖尿病患者1,939例を15年間追跡した検討で,その死因に着目すると,心疾患20.5%,虚血性心疾患12.6%,脳血管障害14.5%で,一般人口と比較した場合の死亡リスクは心疾患で約1.8倍,虚血性心疾患で約3.3倍,脳血管障害で約1.5倍と有意に高かった5).これらの検討結果から分かるように,循環器疾患患者を診療する際,1型,2型を問わず糖尿病,あるいは耐糖能障害の状態を把握する必要がある.
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