書評
―坪田紀明 著―イラストレイテッド肺癌手術―手技の基本とアドバンスト・テクニック[DVD 付](第2版)
白日 高歩
1,2
1第61回日本胸部外科学会
2福岡大学外科
pp.411
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101024
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
坪田紀明先生は今日,わが国の肺外科手術を代表する第一人者である.わが国における肺外科の技術は,かつての肺結核外科を継承する形で今日に伝えられてきた.評者らの若い頃(昭和40年代)にはまだ呼吸器外科手術では肺結核が主体であり,連日各種の区域切除や胸郭形成術が国内各施設で行われていた.もちろん肺葉切除がすべての手技の基本であり,当然肺全摘も今日以上に高.度に実施されていたという記憶がある.やがてそれらが肺癌手術にとって代わられると,一時期ほとんどの手術が肺葉切除に限られるという印象であった.呼吸器外科医としての私は,これは自分たちの技術的発展を阻害し,外科医としての役割の放棄につながる現象で決して歓迎されるものではないという危惧を持つようになった.いかに肺葉切除が肺癌手術の基本であっても,この手術ばかりで日々を過しては何の成長ももたらされないのである.
当時の拡大手術一辺倒の風潮が徐々に修正され,患者の機能損失を出来る限り小さくするための縮小手術も必要との認識が,外科領域全体にようやく浸透しつつあった.そのような雰囲気のもとに実際的な説得力を持って登場してきたのが,坪田先生の提唱する拡大区域切除術の概念であった.外科医は技術的な向上を常にめざすことが義務であり,若い人にとって難しい高度な手技への挑戦は向上への夢を与えるものである.各種区域切除は呼吸器外科医にとって,肺葉切除と並んで習得されるべき必須の技術のはずである.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.