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はじめに
1953年,Kantrowitzらは大動脈拡張期圧を上昇させること(diastolic augmentation)より冠動脈血流が増加することを報告した1).1960年前後にHarkenやClaussら2)が具体的に大動脈拡張期圧の上昇を得る方法として動脈counterpulsation(CP)の補助循環メカニズムを発表して以後,その臨床応用研究が進んだ.1962年にMoulopoulosら3)がIABPの臨床応用を報告し,Soroffら4)は大腿動脈にカニューレを挿入し血液を出し入れしてCPを行い,大動脈拡張期圧の上昇による冠動脈血流の増加,収縮期圧の低下による後負荷軽減(左室仕事量軽減)を示した.また,1963~64年にかけてDennisら5)は動物において下腿に外部圧をかけることでCPが得られることを示し,体外式動脈カウンターパルセーション(external counterpulsation;ECP)の臨床研究が始まった.
ECPは両下肢に3~4セグメントに分割したカフを装着し,拡張期に50msec程度タイミングをずらして末梢よりカフを膨張させることにより拡張期圧上昇効果(diastolic augmentation;DA)を得,収縮期にカフを一気に収縮させることにより後負荷軽減効果(systolic unloading;SU)を得るメカニズムを持つ(図1).更に静脈床の圧迫(squeeze)により心臓への静脈還流が増加し心拍出量を増加させることも明らかになった(表1).虚血性心疾患に対するIABP補助は有効であるが,IABPは侵襲的であり,急性心不全や開心術後早期に短期間用いられてきた.一方,ECPは非侵襲的であり,主として慢性期狭心症の治療効果が検討されてきた.ECPはこれまで50年間の基礎的・臨床的研究を経て,今日欧米では虚血性心疾患(IHD)治療の一つの選択肢として認知されてきた.安全で有効,低コストな狭心症治療法であり,最近では慢性心不全に対する有効性も広く認識されてきた6).
1995年に開発されたEnhanced External Counterpulsation(EECP,Vasomedical社)は1999年には米国Medicareによる保険が適用された7).EECP装置は本邦でも導入され,一定の有効性は認められたが,本邦では全く普及しなかった.理由は,装置が欧米人の大きな体格に適合させてあり,装置全体のサイズも大きく日本の病院では使いづらかった.また,駆動による体感衝撃や騒音が大きく,何よりも患者にとって苦痛が大きかったことがECP治療の本邦での普及を妨げた.一方,欧米では,本邦とは異なりEECPはこの10年間に広く普及し,The International Enhanced External Counterpulsation(EECP)Patient Registryも構築され,その有効性が検証されてきた8).
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