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Bedside Teaching
非心臓手術における心疾患の評価と管理―ガイドラインの信頼性
Perioperative Cardiovascular Evaluation and Management for Noncardiac Surgery:Reliable Guidelines?
今中 和人
1
,
許 俊鋭
2
Kazuhito Imanaka
1
,
Shunei Kyo
2
1埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科
2東京大学重症心不全治療開発講座
1Department of Cardiovascular Surgery, Saitama Medical Center
2Department of Therapeutic Strategy for Heart Failure, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
pp.172-178
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102157
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はじめに
未曽有の高齢化社会を迎えた先進諸国では,何らかの心疾患を持つ患者が非心臓手術を受ける機会が増え,手術死亡の3~6割を心合併症が占めている1,2).非心臓手術における心疾患管理のガイドライン(以下ガイドライン)が必要だが,特に前向き無作為化研究(RCT)は,事象の発生が重篤な病状に直結するためか極めて少なかった.他分野と比べかなり雑駁ながら,ガイドラインは1996年にアメリカで発行され,これに追随して日本でも2003年に作成された3)が,ヨーロッパには存在すらしなかった.
しかしその頃以降,欧米からRCTの報告が出始めた.今日まで本格的RCTは多くなく,複数のRCTが同様に結論したというエビデンスレベルAの勧告は少ないが,アメリカでは2007年に改訂版4)が,ヨーロッパも2009年にガイドライン5)が発行された.両者は根拠とした論文がほぼ共通で内容はかなり似通っており,コスト意識を色濃く反映してか,臨床的転帰の有意な改善に結びつかなければ,検査であれ処置であれ「必要ない」と断じる傾向が強い.それなりの合併疾患のある患者では手術リスクが明らかに高いのは不可避と甘受し,死亡率などの具体的な数字には拘泥していないようにも見える.
医療を取り巻く状況の険しさゆえ過剰医療に陥りがちな日本の現状にとって,欧米ガイドラインは教訓的だが,そのまま適用することには不安を禁じ得ず,部分的には疑義すらあった.そして今,世界2大学会のガイドラインの信憑性に暗雲が立ち込め始めている.本稿では問題を鮮明にするために論理展開の逆方向,即ち重要結論の根拠の検証から始め,信頼に足るガイドラインを希求して考察する.
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